あいしてる


彼の怒鳴り声に動揺した私は、何も言えず、ただ彼の隣で突っ立っているだけだった。

彼はそれが気に入らなかったようで、苛立ちをぶつけるかのように、手にしていたやかんを乱暴に置いた。


彼がコーヒーを飲もうと沸かしたお湯。

それが、注ぎ口から勢いよく私に向かって飛び出してきた。


一瞬の出来事。


「……っ!」

感覚が、少し遅れて声になる。


「あっ、…あつっ、……熱い!」

服にかかったお湯は温度を保ったまま、ぴったりと肌にくっついて離れない。

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