手紙
 小さな町で生まれ育った私たちは、始まりからすれ違いだった。

家庭の事情で大学をやめ、地元に帰って来た彼と、第一志望だった県外の高校に入ったばかりの私。
夏休みの帰省中に出会い、恋をした・・・。

 21歳と16歳。住人がほぼ知り合いというこの町では目立ちすぎたのかもしれない。
私たちが一生懸命になればなるほど、噂になり、親の耳にも入ることになった。
厳格だった両親は、もちろん、恋愛に理解などあるはずなく・・・・・・ことあるごとに
「今おまえがするべきことは何だ?」
「あの男に会いに帰るのなら、帰ってこなくていい!」
と厳しい言葉を浴びせられた。

 あの頃は、幼くて、逃げ出すことしか考えられなった私に

「逃げていい方向に行くことなんて、きっとないよ。今はなっちゃんがやんなきゃいけないことをちゃんとしようよ。」

 そう言って、抱きしめてくれた彼。

 私は町の外で暮らしていたから平気だったけれど、彼はずっとあの町でいろんな噂を立てられ、私が見えないところでつらい思いをしていた。

 好きだという気持ちだけで、周りのことを見ないようにしていた私。

たぶん、彼を好きになっている自分に酔っていたのかもしれない。それが幼い恋・・・。

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