タイトル未編集


 私の左手は、薬指だけに赤いマニキュアが塗られている。

「それ、何かのおまじない?」

この指を見て、間宮君が言った。

「え、あ、」

動揺する私。間宮君は笑った。

「薬指って、運命の赤い糸がある指じゃん。恋の、おまじない?」

その笑顔があまりにも無邪気で、私は思いがけず嘘を吐いた。

「そう、おまじない」

本当は、この一本だけのマニキュアは、ただ単に落とし忘れていただけだ。今日から始業式で、昨日まで塗っていたマニキュアを今朝慌てて落とした際に一本だけ落とし忘れただけ。でも私は、ずっと好きだった間宮君にそのことを告げると、この場の空気が白けてしまうのではないかと心配だったので、そんな嘘を吐いた。間宮君の笑顔は、屈託が無い。

「そっか、谷原好きな人いるんだ」
「う、うん」
「でもさ、おまじないなんてするくらいだから、まだ片思い?彼氏ではないんでしょ?」
「そ、そーだね。まだあんまり仲良くもないかな」
「へぇ。なんだ、よかった。じゃあさ、」
「?」
「俺にもチャンスはあるんだよね」
「え」
「だって、谷原とその片思いの相手、まだ何でもないんでしょ」

だったら……と、間宮君は私の左手を手に取った。薬指を握られ、更に戸惑う私。

「だったら、俺が隙入る
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