Realtime:kiss
蒼佑がこの部屋にあがるのはこれが2度目。


どこにでもある平凡な間取りのせいかいとも簡単にリビングへと到達する。



「・・・コッ、コーヒーでも、入れる?」


「・・・奈緒ぉ、昨日は・・・」


私は聞こえない振りをしてキッチンへ逃げ込んだ。


油断すると今にも零れてしまいそうな私の思い・・・


コーヒーを入れ、私はキュッと口を真一文字に結び、リビングへ戻った。



「奈緒?・・・どっか出かけるのか?」


優しい声が今の私には辛い・・・




『どんな事があっても俺を信じろ』

『未練がましいんだよ、お前』



どちらも蒼佑の言葉だった。


そしていつもと変わらぬ優しい眼差しがここに在る。


私は何をどう信じていいのか分からない。


昨日の蒼佑の態度、あれは何だったのか、傍で聞こえた女性の声は・・・


一体誰だったのか・・・


確かめたい、ううん、怖くて出来ない。


コーヒーカップを持つ手が震える。












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