Realtime:kiss
「まぁまぁ常務、そう焦りなさんな、とにかく座りなさい」
「失礼いたします」
そう言って腰を下ろした。
「……さて、咲宮君、君は今、君の置かれている立場は理解しているね?」
専務が私に念を押すように言った。
私の置かれている立場…それは私的な事で、他の従業員の仕事に支障をきたす程の、言わば、渦中の人…
私は短く、はいと答えた。
うん、と頷き、今度は泣いている女性に私にしたのと同じ質問をした。
「……もん…あたしは悪くないもん!
碕岡さんが、こんな「浅野君!止めなさい!
聞かれた事に答えなさい」
やっぱりこの子が浅野さんなんだ…
感情的になった女性に向かって大声で怒鳴りつけたのは専務だった。
こんな専務を見るのは初めてだった。
私は驚いて専務を見た。
視線に気付いたのか、専務はこちらを見て、優しい笑顔で頷いた。
まるで大丈夫だよと言わんばかりに……
「神崎君、こっちに来たまえ」
専務は役付秘書の神崎主任を自席に呼び、何やら耳打ちしていた。
「かしこまりました。
浅野さん、咲宮さん、こちらに来ていただける?」
私と浅野さんは主任に呼ばれ、会議室の隅に行った。