Realtime:kiss
私は引き出しから財布を取り出し、カーディガンを羽織り、ベッドから降り立った。



えっ…足に力が入んない。


ベッドに尻餅をつくようにへたり込む。


たった三日やそこら歩かなかっただけで人間て歩けなくなるものなの?


頭をなるべく動かさないよう主治医に言われ、トイレは専ら看護士付き、車椅子での移動、自分の足で歩く事はなかった…



コンコンコン……


「悪りぃ、遅くなった…
って、お前何やってんの?」

「べっ、べっつにぃ!?おっ、遅かったね、後30分程で面会終わるよ」


平静を装いすまして答えた。


「財布握り締めて何やってんだ?
お前変わってんな」


「変わってないっ。
奈津紀がケーキ持ってきたの!
飲み物買いに行こうとしただけじゃん!」


「……ふ~ん…てか、歩く許可、出たんだ…」



う……



今日の回診で先生は、明日から少しずつ慣らしていこうといっていた。


それって、オッケーって事だよね!?


私が黙っていると蒼佑はベッドから投げ出されている私の足を持ってベッドに上げる。


「大人しく待ってろ、俺が行ってくる」そう言って部屋から出て行った。


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