Realtime:kiss
退院当日、一度も病室に現れなかった父が来た。

少しぐらい熱があっても会社を休まない父が会社を休んで来た。



「心配で心配で、私が病院から帰ったらひつこい位奈緒はどうだった?って…
なら、自分の目で確かめればって、いつも言ってたんだけどねぇ…
でもなかなかこっちに足が向かなくてねぇ、あれは性分だから仕方ないわね。
私はもう諦めているけどね?

奈緒はあんなの捕まえたらダメよ!?」


なんて、母はもうウンザリと言わんばかりに愚痴をこぼす。


ブスッと仏頂面で母を睨み付ける父…


なんか可愛いかも、なんて、男親、捕まえて、こんな事思う私って、ファザコンなのかなぁ。


主治医の先生が病室に現れた。


退院後の生活や次の診察日等、退院していく患者さんに話す事を、私も例外なく受けた。



「じゃ、咲宮さん、お大事に!」


片手を上げて軽く手を振りながら先生は退室した。


そんな先生と入れ替わりに、なんと、蒼佑が現れた。


私は驚いて、言葉が出なかった。



「奈緒?こちらは?」


爛々と目を輝かせ、私の言葉を待っている母。



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