Realtime:kiss
病院を出て、駐車場に向かう蒼佑の後をついて行く。

先生の言ったように、いつものように歩けている私。


でも、なかなか自分のペースがつかめず、歩くのは凄く遅い。


そんな私に気付いたのか、蒼佑は立ち止まり、私が追い付くのを待ってくれている。


右手には私の着替えが入ったボストンバックを持って……


「ほら」

空いている左手を私に差し出す蒼佑。

私は素直にその手を取った。


後部座席に私の鞄を置き、助手席に私を座らせ、運転席に自らも座る。


エンジンをかけ、シフトをローに入れ、静かに車は走り出した。




「ちょっと、道が違うんじゃない?」

自宅とは全く違う方向へハンドルを切る蒼佑に、私は思わず声を上げた。


「違わねぇぜ?飯食ってくんだから」


「……でも…」


正直、真っ直ぐ帰りたい。

病気じゃないんだけど、まだ体がしんどい。

でも、蒼佑とも、もう少し一緒にいたい気もする、そんな私はワガママなのかなぁ。


「…でも?その後は何」


チラッとこちらを向いて蒼佑が言った。


「しんどいのか?」


「………」


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