Realtime:kiss
「何だよ、喧嘩売ってんのかよ…」


冷たく、沈んだ声で私を威嚇するように発せられたその言葉に、私はついムキになった。


「そっちこそっ。
あたしからかって、何が楽しいの?」


蒼佑の目つきが変わった。


はすに構えて肩越しに私を見ていた蒼佑が、私に詰め寄る。


一歩一歩、蒼佑が踏み出す度に、私は後退りした。


トンッ……


背中に冷たさを感じ、それが冷蔵庫である事に気付き、私はこれ以上後ろに下がる事は許されなかった。


「……お前、何で逃げなかった?
俺がキスしようとした時、何で逃げなかった?」

「にっ、逃げたじゃないの。殴りかかりもしたじゃないっ。なのに、なのに」


「でも、その後は?
その後、お前は逃げなかった。
俺は何度も言ったと思うぜ?
気に入ったって…
俺のもんになれって…付き合おうって…
それとも何か?
奈緒は好きでもない野郎と平気で唇、重ねられるのか?
そんな女なのか?」


バンッと冷蔵庫を拳で殴る蒼佑。


ビクッ


「あたしはそんな事、聞きたいんじゃない!」



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