Realtime:kiss
いきなり腕を掴まれ、今来た廊下を後戻りして、さっき通った掲示板の前で立ち止まった。


まりちゃんは、人だかりを掻き分け、ぐんぐん掲示板に近付く。



「これ!どういう事、ですか!先輩、何か聞いてませんか?」


私は衝撃のあまり、腕に通した鞄を力無く床に落とした。



何?これ……




―――辞令営業一課


碕岡蒼佑


上記の者  


5月1日付けをもって


岩手支店勤務を命ずる



―――






「先輩?大丈夫、ですか?」


「うん……大丈夫」


「彼氏さん、ここ数日有給らしくって会社お休みしてます。営業のお友達から何か聞いたりしてないんですか?」


え?


奈津紀…


夕べ携帯で話した時、何かを知っている感じはなかった。


山中さんと一緒だったし、奈津紀に限って私に蒼佑の事で隠し事なんて……


山中さんは?


あっ、私が退院したその日、山中さんから電話があった。


その時の蒼佑は、少し何かが違っていた。


山中さんは多分、知っている…


「まりちゃん、先に事務所に戻ってて貰える?
私、営業にちょっと行ってくる」



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