Realtime:kiss
私はスゥッと大きく息を吸い込んだ。

「言いたい事はそれだけ?だったら何も話す事は無いわ。
奈津紀、陽子、行こ?」


私達は席を立ち、トレイを持って、返却口に向かう。


「何ぃ!?あの態度、まじムカつくし!」

背後からそんな声が聞こえてきた。


トレイを返却口に返し、私達は社食を後にした。

握った拳に力が入る。


「気にする事なんか、全然無いんだからね?
あぁいう女は、徒党を組まないと何にも出来ないんだよ」


奈津紀は、私を気遣い、後ろを見ながらそう言った。

悔しい、滅茶苦茶悔しい。何の関係もない人に、私の…
私達の何が分かるのか…


大声でそう叫びたかった。


「ありがとう、奈津紀、陽子…二人が居なかったら、あたし…」


二人に挟まれ、両脇に腕を絡められ、私達は歩いた。




「今日も碕岡さん家?」


陽子の問いに、私は素直に頷いた。


「ん、素直で宜しい」


「何だかんだ言って、やっぱ、あんたと蒼佑君、お似合いなんだよ。成るべくしてなったって感じだよね、陽子?」


私を挟んで二人はニコニコしながらそんな事を言った。


「大丈夫、碕岡さんが居ない間は、あたし達が奈緒を守るから…」


陽子の独り言のような呟きに、私は胸が熱くなった。


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