Realtime:kiss
「じゃ、行ってくる」

「…ん…いって…らっしゃい…」

涙でグチャグチャの顔で精一杯の笑顔を作る。

「ぶはっ…何だよその顔、ブスになってんぞ、ブスに」

「ブスだもん!仕方ないじゃん」

駅のホームで私達はしばしの別れの時を迎えていた。


ギュッと固く繋がれたてがなかなか離れない。


最後の最後まで憎まれ口を互い叩きながら、その時を待つ…



《プルルルル…間もなく……》



発車のアナウンスが流れる……



繋いだ指に一瞬力が籠もった……



そして、徐々に離れていく…


ゆっくりと電車に乗り込む蒼佑。


一度も振り向かず、いつものように左手をヒラヒラさせて、電車に乗り込む……



「蒼佑っ、行ってらっしゃい!」


ドアが閉まるその瞬間に私は大声で叫んだ。




大丈夫、私達は繋がっている、だから、私は蒼佑の帰りをあの家で待っていられる。



大丈夫……




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