Realtime:kiss

真っ赤な顔でテーブルをバンッと叩き、激興する父…

私と母は顔を見合わせて、はぁと、溜め息をついた。



「朝早く、申し訳ありません。碕岡です」
背後からいきなり蒼佑が声をかけてきた。

「お父さんがお怒りになるのも、ごもっともです」


そう言いながらキッチンに入ってくる蒼佑に、父は赤い顔をもっと紅潮させ、立ち上がるとリビングに行ってしまった…


その後を追いかける蒼佑。


「今日は、不躾なお願いがあって参りました」


「………」


「私の勝手な願いを奈緒さんは快く引き受けて貰ったのですが、こちらには何の承諾も頂かず、大変反省しております」


ソファに座り、明後日の方向を向いたまま、新聞をおもむろに開く父。


私は居てもたっても居られず、つい声を上げた。

「お父さん、何とか言ったらどうなの!?」

すると、蒼佑は私に向かって、こう言った。

「奈緒、そんな風に親に向かって言うもんじゃない」

「……だって…」

「今話してるのは、お父さんと、私だろ?奈緒は黙ってて……」

優しい声ではあるが、口調は厳しかった。








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