Realtime:kiss
引越も滞りなく終わり、空いていた蒼佑の隣の部屋を貰って、荷を解いている。


帰りの電車の中で、実家に行った時の心境をあぁだこぅだと色々話してくれた蒼佑。


私には落ち着いて見えたけど、実はかなり緊張していたらしい。


「いきなり怒鳴り声が聞こえた時には、もう、逃げ出したかったぜ」とか、


「奈緒を宜しくと握手した時、すんげぇ力で、マジびびった」とか……


そんな会話を思い出し、ニヤニヤしていたら、ドアがノックされ、蒼佑が顔を覗かせた。


「手伝おうか?…って、何にやけてんだよ…」

「べっつにぃ!?すぐに終わるから、蒼佑はゆっくりしてて?」

私はそう言ったけど、蒼佑は部屋に入ってきた。


運び入れたベッドに腰をかけて、部屋を眺めていた。

「そんなにジロジロ見ないでよ…」

少し困惑気味に言う。

「ありがと、な!?奈緒」

キョトンとしている私の腕を引っ張って、抱き寄せる。


「…どうしたの?」

私の肩に顎を乗せ、ふぅっと息を吐いた蒼佑は、また一つ、大きく息を吸った。




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