Realtime:kiss
彼女は財布から千円札を取り出し、私がしたようにテーブルにそれを置き、わざと私の肩に自分の肩をぶつけて店から出て行った。



私はヘナヘナと椅子に崩れるように座り込んでしまった。


「お待たせし致しまし…た…
あのぉ…もう一方は……」

店員がコーヒーを運んできた。

「あっ……置いて下さい」

そう言うのが精一杯だった。



とにかく落ち着こう…



私はコーヒーを一口二口と、口に運ぶ。




何も無かったとでも思ってるの?



浅野さんはそう言って、薄笑いを浮かべていた。


今更、何がしたいの?




どれくらいそうしていただろうか……



バッグの中から着信音が聞こえ、私は我に返った。

『奈緒?今どこ?もう買えたか?』

「ううん、まだぁ…もう少し待ってて?」

冷静に、今の状況を悟られないよう慎重に言った。


『んじゃあさぁ…この建物の真ん前にあるドルチェってカフェで待ってっから。
終わったらラインか、携帯、鳴らせよ?』





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