Realtime:kiss
その瞬間、私は扉のノブから手を離し、踵を返し、走り出した。


無意識だった。




券売機に小銭を入れ、私は丁度入ってきた電車に飛び乗った。

比較的空いていて、座席に座るとほぼ同時に携帯が鳴りだした。

「すっ、すみません!」

鳴りだした携帯を握り締め、白い目でこちらを見ている他の乗客に頭を下げながら、相手が誰なのか確認もせず、電源を落とした。



もう一度、小さな声ですみませんと周りに謝り、隣の車両に移った。





電車を降りて、トボトボ家に向かって歩く。



あっ……


私は着信があった事を思い出し、誰だったのか、確認する為携帯の電源を入れた。




「…そうすけ…」


着信は蒼佑だった。


ラインも入っていた。



《携帯切るな!?今どこ?》



それだけだった。


あの店で見た光景は、私の見間違い?


ううん、見間違いなんかじゃない。


あの時私が目にしたモノ…




蒼佑の肩に頭を当て、涙を流しながら寄り添う、浅野さんの姿…








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