Realtime:kiss
あっ……

帰ってきた…


玄関先から聞こえてくるこの音は、蒼佑の車のエンジン音…


ガレージに駐車した後、必ず一度ふかす。



「ただいま…」

蒼佑がふてくされた表情で、リビングに入ってくる。

ソファにもたれ掛かっている私に近付くと、おでこをデコピンされた。


「った…」


おでこを押さえながら上目使いに蒼佑を見た。


「ったく、そんな目で見たってダァメ!
一体何考えてんだよ…」


テーブルの上に箱を置き、ドカッとソファに腰を下ろすと、蒼佑は私の肩をぎゅっと抱き寄せ、何とも言えない顔を私に見せた。


「言いたい事、あんだろ?」


うっ…


蒼佑は、何でいつもそうなんだろう…

私の変化にすぐ気が付く。

「…なんの…事?」

旅行に行く前に蒼佑と嫌な雰囲気にはなりたくない。


「……言いたくないなら…いいや」


えっ?


いいの?


たったそれだけの事なのに、私は泣きそうな気持ちになった。




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