Realtime:kiss



「今日、浅野に会った・・・」


部屋に入るなり私の方も見ずに蒼佑はそう切り出した。


「・・・・・・」


黙ったまま、蒼佑の後姿を見ていた。


「お前、俺に言いたい事、聞きたい事、あんじゃねぇの?」


やっぱり・・・


蒼佑にはお見通しだった訳だ。



「デパートの紳士服売り場で・・・あ、浅野さんに声かけられた・・・
で、喫茶店に誘われたけど、気分を害したのか、先に帰られちゃった・・・」


「なんか・・・言われたんじゃねぇの?」


私の方に向き直り、私の目を見据えて蒼佑は問う。



どうしよう・・・


私は蒼佑を信じてる。


それに、もし何かがあったとしても、それは付き合うずっと前の話であって、だから私がどうこう言う立場にも無い訳で・・・


でも、このまま心に蓋をして、蒼佑に何も聞かず曲解したまま旅行に行けばどうなるのか、容易に想像は出来る。



ベッドに腰を下ろし、腕組みをして、私を見ている蒼佑、何だかちょっと怖い・・・



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