Realtime:kiss
「ねぇ、ホントに入らなきゃ、ダメ?」


「ってりめぇだっつうの!早く入って来いよ」


チェックインした宿は日本家屋の渋い趣のある建物だった。


すべての部屋に露天風呂があり、食事も部屋食だった。


「おい、奈緒、早くしろよ、でないと仲居さんと鉢合わせすんぞ」

私が躊躇している理由……

「分かるけど、だからって何で一緒に入る訳?」


「夕飯まで時間がねぇからだろ?」


「…だったら、あたし、食事の後でいい。
その方がゆっくり入れるし」


そうなの…


露天風呂に、一緒に入るよう蒼佑に強要されている…


「ガタガタうるさい。早く来い」


ひぇえ…もお泣きたいよぉ…


「絶対見ないでよ!?
あたしがいいって言うまで絶対に見ないでよ?」


念には念を入れ、蒼佑に反対側を向いてもらい、そう言った。


「はいはい…こうか?」


反対側を向きながら、惚けた声で言う蒼佑。


私はバスタオルを体に巻き付け、ソロリソロリと湯船に向かい、屈み込んで体に掻け湯して、中に入った。


もお、死ぬほど恥ずかしい。




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