Realtime:kiss
「どした?」

私は固まってしまった。


だって、だって…



「予算は一万だったよね…」

開口一番に出た言葉…

「レジで払ったのは一万だけど、それが何か?」


私は蒼佑がくれたキラキラ輝くダイヤの付いた指輪の入った箱を握り締めた。


「…嘘つき…ゥッ…蒼佑の…ばか…クッ」


「…奈緒?泣いてる、のか……?」


ソッと肩を抱き寄せ、私の顔を覗き込む蒼佑は、少し戸惑ったようだった。

「参ったなあ……泣かれるとは思ってなかった…奈緒?泣くなって…」

なかなか泣き止まない私に、蒼佑は静かに話し出した。


「前に、多分2月だったと思うけど、サファリパーク、行ったよなぁ……」


蒼佑に体を預け、胸に顔を当てながら私は頷いた。


「そん時言った事、覚えてるか?」


「……何だっけ…」

ホントは覚えてるけど、その事じゃなかったら恥ずかしいから、とぼけて答えた。


左手で私の髪の毛を弄りながら、小さく笑う蒼佑。




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