Realtime:kiss
「印、……」

「うん、印」

そう言いながら、小箱からその印を取り出し、少し悩んだ挙げ句、私の右手を取った。


ニッコリ微笑みながら、それを私の右手の薬指にそっと滑らせた。「…な、何で右手…なの?」

私はてっきり左手薬指にはめるものだと思っていたから、拍子抜けしたように蒼佑に聞いてみた。

「ん?
だってこっちは特別だろ?
きちんと御両親に挨拶いって、俺の方にも挨拶行って、段取り踏んでからだろう?
だから、今はそれで我慢しとけ……」

蒼佑はそう言って、右手の薬指にキスをした。



「覚悟しとけよ?
近い将来、奈緒を嫁さんにすっから。
嫌だのかんだの言ったって、離してやんねぇかんな!?」


ギュッと抱き締められ、深いキスを落とし、何度も角度を変え、合間合間にそんな事を囁いた蒼佑。



「…上等だよ、あたしだって…離れてなんて……やんないんだから…」



私も負けじと蒼佑のキスに答えながら、そう答えた。



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