Realtime:kiss
「悪あがきは、止してよ、この話は決定事項なの。そこの女にもよぉく言って聞かせる事ね」


先程の儚い感じは全くない。


この女・・・


「相変わらず猫を被るのがお上手なこって。
本性を知れば、爺さんも考えを変えるでしょうよ」

「ふっ、あたしがそんなへまを踏むとでも思ってるの?
だからあんたは馬鹿なのよ」


そんな捨て台詞を残して部屋から出て行った。


「おっ、お嬢さまっ」


お付きの男性が慌てて後を追う。



「はぁ、どうするつもりだ!
蒼佑!あんなに怒らせてっ」

右手を少し薄くなった頭にやり、カリカリ掻きながら呆れ顔で言う。


「どうもこうも、反古にして下されば良いだけですよ、爺様」


「馬鹿を言うな!
ワシがどれだけこの話に力を注いできたか、お前に分からん訳が有るまい?」


「とにかく、この縁談は受けかねます。
私にはこの、咲宮奈緒という女性がおりますので」

それだけ言うと、私を促し部屋から出た。


爺様と呼ばれていた初老の男性が何か喚いていたけれど。



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