Realtime:kiss
本当に頼りになる。

時間と場所を山中さんに伝え、今晩に備える。




無理矢理奈津紀を連れ出し、店に向かうタクシーの中で、私は奈津紀に尋ねた。


「なんで、憎まれ口たたいたの?」


「……ないから」

えっ?


「自信がないからだよ。
圭吾は一流大学出てて、今は支社勤務だけど、後2~3年もすれば本社に必ず引っ張られる。

そんな時、私みたいなのがいたら、そう思うとすんごく不安になる。
ご両親にしたって、然りだよ…

手塩にかけて育てたかわいい息子を、大学も出ていない、専学卒の私に渡せる訳ない……」


驚いた、奈津紀がそんな事考えていたなんて……


私と陽子は顔を見合わせた。

「ねぇ、奈津紀?人の価値って、大学出てる出てないで決まるの?」

陽子が静かに聞いた。


「……そうじゃないけど……、でも、やっぱり世の中はそういうものでしょ?」


「なんか、ガッカリした。
奈津紀がそんな事思ってるなんて…」


陽子は奈津紀から視線を外し、窓の外の流れる風景を見ていた。


そのまま私達は一言も喋ることなく、現地に到着した。



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