Realtime:kiss



何故だろう。


私は泣いていた。


何故だか分からないけど私は泣いていた。





「俺は今でも信じられない。

あの優しかった叔母がそんな事するなんて・・・

仮にもしそれが事実でも、きっと叔母は父さんの事を愛していたから、だから・・・

俺はそう思いたかった。



あれからもう3年が経つ。


俺は貴がどこで何をして暮らしているのか、凄く心配で、ずっと探し続けていたんだ、貴には責任はない、爺さんの後を継ぐのに、俺は相応しくない、だから敢えて就職をした。




探して探して、そしてやっと見つけた。

あの相川の経営するホテルで・・・


偶然だった、接待で偶然使ったホテルの最上階のレストランで、アイツはシェフをしていたんだ」







遠い目をしながら淡々と話す碕岡蒼佑が、私には痛々しくてたまらなかった。



「俺は貴に声をかけるべきか迷った。
あんなに会いたかった貴がすぐ側にいる。
けど、いざとなると・・・」


私はたまらず、碕岡蒼佑に近づき、思わず抱き締めてしまった。


驚いたように私を見上げた碕岡蒼佑は、一瞬泣きそうな表情を浮かべた。


< 48 / 266 >

この作品をシェア

pagetop