Realtime:kiss
仕方無く今さっき、蒼佑が顔を覗かせた部屋へと足を運ぶ。


そこは和室で、仏壇が置いてあった。


「俺の父さんと母さん」


そこには優しそうに微笑む男性と女性が寄り添って写る写真が飾られていた。


そうか、蒼佑はこの家で二人を祀っていたんだ。


「私も、いい?」

すると蒼佑は少しずれてくれて、私を仏壇の正面に座らせてくれた。


お線香に火をつけ、おりんを鳴らす。

チーン


「この家さ、俺達が五月さん頼って京都に行くまで暮らしてた家なんだ」


築3~40年は経っているであろう、木造家屋。


廊下もこの部屋も、歩くと軋む。



「いつから・・・ここで?」


私は蒼佑に尋ねると、「就職が決まってすぐ」と応えてくれた。


「五月さんから売りに出されていると聞いて、買った。もちろんローンだけど・・・」


不動産屋さんによると、もう20年近く空き家状態が続き、近所の人が気持ち悪いからどうにかならないかと役所に相談したそうだ。






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