Realtime:kiss
私は不安そうな顔を蒼佑に向けた。


「……離せ」


先ほどとは打って変わってドスの効いた低い声で奴を威嚇する蒼佑……


「おおおおお前こそっ、ぼぼぼぼ僕のなぁちゃんをどどどどどうするつもりだっ」


「僕の?お前、悪いのは容姿だけかと思ったら、おつむもいかれてんな」
と平然な顔つきで言い切った。


「なっなっなにおぅ⁈」


完全に頭に来たのだろう、私の左手首を離すとズンズンと、運転席側の蒼佑に向かって歩いていく。


「奈緒!乗れ!」

私は蒼佑の言葉に弾かれたように、助手席に滑り込む。


当然、蒼佑も素早く車に乗り込み、ギアを一速に入れると、アクセルを思い切り踏み込んだ……


キキキィッタイヤのスリップ音がこのあまり広くない道路に響き渡った……


私はグングン加速していく車の中からドアミラーに映り、小さくなっていく勝の姿を確認した。


「バイバイ…まさる…」


小さく一言呟いた。


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