Realtime:kiss
そんな私の呟きが聞こえたのか、蒼佑は前を見ながら、私の右手を一度だけ、力を込めて握った…


大通りに出て暫くして、交差点の信号で引っかかった。


私は何だか居心地が悪い。


蒼佑は、何も言わずに前を見ている…


どうしよう、空気が何かヤバい……


そりゃそうだよ、いくらつき合ってないにしても、今から一緒に出かけようとしている女が、他の男とプチ修羅場を演じてたんだ、いい気はしない。

はぁ、と、私はたまらず溜め息をこぼした。



「なんだよ、その溜め息…」

横目で私を見ながら不手腐れた感じで言う蒼佑…


「べっ、別に?」

私はなんて答えていいのか分からず、適当に言ってしまった。


そうじゃない、ありがとうって、言わなきゃいけないのに……




「あの……さき、岡さん?
さっきは「そうすけ!!碕岡じゃなくて、蒼佑、だろ?」

「えっ?」

私が言い終わらないうちから言葉を重ねた蒼佑。



私が一瞬戸惑っていると、信号が青に変わり、車は動き出した。





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