Realtime:kiss
駅に向かう道中、落としていた携帯の電源を入れる。


アドレス帳から蒼佑の番号を探し出し、通話ボタンを押す。



『奈緒、電話遅すぎだぜ?』



電話に出た蒼佑は不機嫌そうな声だったが、そんな事、どうでもいい。


「馬鹿っ!何で言わないのよ!
今から行くから、行ったら、洗いざらい吐いて貰うからね」


それだけ言うと携帯を切った。


駅について、大事な事を思い出す。


蒼佑の家は分かるけど、駅、どこで降りたらいいの……暫く思案していたら、携帯がなる。


蒼佑からだった。


「はい…」

『今、どこだ』

短い問いに今居る駅の名前を言うと、上りで五つ目の駅で降りろと蒼佑は言う。


言われた通り、その駅で降りると、改札口で蒼佑は待っていてくれた。


昼間、病院で見た痛々しいその姿のまま、服装は変わってはいたけれど、怪我人には変わりない。




安静にしていないといけないのに、私ったら……


今更ながら、自分の軽率な行動を恥じる。





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