Realtime:kiss
駅から歩く事約10分、何も話さず無言で歩く。


蒼佑の家が見えてきた。


門扉を開け、敷地内に入ると、そこにある筈の黒い車が無い、その代わり、白いセダンが止まっていた。


「そんなとこに突っ立ってないで、サッサとこっち来い」


見慣れぬ白いセダンをじっと見ている私に蒼佑は面倒臭そうに言った。


渋々蒼佑の玄関に行くと、蒼佑は既に室内に行ってしまっていた。


「お邪魔しまぁす…」


この前通された、和室を覗いたが、蒼佑の姿はない。


私の足は廊下の奥にあるリビングへ向かう。


あれ?いない……


入り口で部屋の中を伺う私に背後から蒼佑が抱き締めてきた。


「んぎゃぁ」

猫でも踏みつけたような声を上げた私…


「連絡無しで、どこほっつき歩いてたんだ?」


耳元に熱い吐息がかかり、また変な声を上げかけたけど、我慢した。


「そっ、そんな事より、何で言ってくれなかったの?」


私はクルリと彼の方に向きを変え、詰め寄った。


「何の事?」

へぇ…とぼけるんだ…



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