Realtime:kiss

「…有り得ないっしょ…今時政略結婚なんて……」


奈津紀と陽子は顔を見合わせて、信じられないといった風だった。


「その爺さんのお店って、あの土岐乃も、なんだよねぇ…
あたし、時々親に連れてって貰ってたから知ってるけど、あそこの女将さん、すんごく良い人なんだよ、あの人も、その爺さんの……
なんか幻滅したぁ…」



「五月さんは、蒼佑君の亡くなられたお母様のお姉さんなの、あの人とは、何の関係もないよ、だからそんな風に言わないで」


私はあの、おっとりした五月さんとあの人を同じ括りで見て欲しくなかった。


「……う、うん、ごめん…」



ヴヴヴ……鞄の中の携帯が鳴っていた。


「…奈緒？鳴ってるの、奈緒の携帯じゃないの？出ないの？」


私は陽子に指摘され、一旦は携帯を手にしたが、ディスプレイの名前を見て、再び携帯を鞄に戻した。


「蒼佑、君？」

奈津紀に聞かれ、私は首を縦に振った。