Realtime:kiss

当日のお客はとらない、そんな宿だったが、会社のネームバリューと、何よりキャンセルが出たせいで、なんとか行けることになった。


真冬と言う事もあり、服は着た切り雀で、下着は電車に乗る前に近くの量販店で購入した。


嫌な事を忘れ、ただひたすら親友二人と楽しい温泉旅行を楽しんだ。


旅行中の二日間、携帯の電源は完全オフを決め込んだ。


しかし、旅行から帰って出勤した翌日、出勤途中に入れた携帯の電源…鬼のような数のラインに閉口した。


有り得ない……お昼休み、例によって例の如く、いつものメンバーでランチをとっていると、携帯が振るえる。



絶対に取らない、そう決めた。何が何でも取らない。




「ねぇ、奈緒？なんか、蒼佑君が可愛そうになってきた…ちゃんと会って話した方がいいよ」


奈津紀がそんな事言い出した。



陽子も隣で、ウンウンと首を振っている。


「もしかしたらさぁ、その、相川なんとかさんと婚約、破談にしてるかも…」


一体何の根拠があって、そんな事を言うのか、奈津紀の言葉を疑った。