Realtime:kiss
私は立ち竦んだまま、動けないでいた。


「早く入りなさいよ!暖房が逃げるじゃない!!」

ふんっ、と、横を向きながら相川馨子が憎まれ口を叩く。


「奈緒?」


蒼佑が立ち上がり、私に近付いてきた。


動けない私の腰にソッと手を添え、優しい笑顔をくれる。

その手に押されるように前に歩み出る。



「取り敢えず、座れよ」

黙ったまま、私は促されるまま座椅子に腰を下ろす。



「碕岡貴、俺の兄さんだ、相川の事は知ってるな?」


蒼佑は二人を私に紹介してくれた。


ただ、この二人の関係は分からない。


「兄さん、こちらが咲宮奈緒さん」


「初めまして、貴です。

兄と紹介されて、何か照れますけど…よろしく」

座ったままではあるが、右手を差し出され、慌てて私も右手を差し出した。


「初めまして、咲宮奈緒です。
よろしくお願いします」


軽く握手をする。


「俺の大事な人の手、何時まで握ってんだよ、兄貴。」


驚いて、蒼佑を見た。





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