Realtime:kiss
その言葉に私は向かいに座る二人を交互に見た。


貴さんは相川さんの肩を抱き寄せ、蒼佑と同じ笑顔で笑った。

当の相川さんは真っ赤な顔をして、俯いている。


そうだったんだ…

全てを理解した私は緊張の糸が切れたのか、涙が込み上げてきた。


「そうだったんですね……そうだったんだ…」


「おい、何泣いてんだよっ」


隣で焦る蒼佑に、貴さんが追い討ちをかける。


「そうか、蒼ちゃんの弱点は奈緒ちゃんか」

「そうよ、この馬鹿な弟君、この貧乏くさい女が弱点なのよ」


相川さんも援護する。


貧乏くさい女って、ちょっとムカついたけど……


「お前ら、覚えてろよ?
誰のお陰で今そうして居られるか、分かってんのかよ。アホらし。
お前等と居るとこっちがおかしくならぁ、奈緒、行くぞ!」


いきなり立ち上がり、私の腕を引き上げた。


バランスを崩し、蒼佑に倒れ込む。


蒼佑はそんな私の身体を抱き止めそのまま、引きするように部屋を後にした。


五月さんに“兄貴達に何か旨いもん食わせてやって”と言い残し、料亭を後にした。



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