アネモネの丘


 お兄様って舞踏会とかあんまり好きじゃないみたいだから……本当に行く気かが知りたい。私は舞踏会の雰囲気は好き。色々な人と出会えるから。
 もしかしたら、花楓は苦手かもしれない。慣れてないし、人見知りな部分もあるから。

「お兄様、来週の舞踏会には参加されるの?」
「ああ、バジルも行きたいって言ってたからな」

 バジルはお兄様の護衛兼友人。ものすごく軽い人だから私は少し苦手。でも、お兄様の隣に並んでも見劣りしないくらいの容姿をしている。バジルの燃えるような赤の髪はとても彼に合っている。
 軽い人だけど、あの人も色々あるらしい。何かは知らないけど、お兄様が言っていた。

「あの方が好きそうなイベントだものね。……花楓は会わさないようにしないと」
「友達をか?お前の友人になるくらいだから合わせない方が見の為だな」

 花楓は多分本人の自覚は無いけど、美人。あの白い肌をしていて、黒いストレートの髪が似合うのは花楓しかいない。学校でも花楓に憧れている人がいるけど、本人に自覚なし。私の事を見ていると勘違いするほど。
 無自覚だから私は好感が持てる。主張する人間は嫌い。 

「あの人の周りには絶対いないタイプだもの、会ったら絶対目を付けるわ」
「ルチアがそんなに絶賛する友人を俺も見てみたいよ」

 お兄様が女の人に興味を示すなんて珍しい。……私の知るところではだけど。
 十四歳から十七歳までの三年間ブルク公国の学校に行ってたから、お兄様の女性とのかかわりはあまり知らない。お兄様も話したがらないし。バジルは聞かなくても話すから知ってるけど。
 私の友人だから気になるって感じなのかもしれないけどね。

「バジルが居ないときに紹介することにするわ」
 何としてもバジルとは合わせないようにしないと。花楓が苦手なタイプだと思う。

「ああ、楽しみにしておくよ」


 お兄様はそう言ってまた微笑んだ。この笑顔に何人の人が落とされたのかを知りたいわ。



< 11 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop