アネモネの丘
仮面舞踏会 *ルチア視点*
私がお兄様を探しに行って結局見つからずに花楓の所に戻ると、赤髪のバジルが花楓に絡んでいた。
「あんの男!」
花楓になんてことを!と思って近づこうとしたら、二人の所に向かって私の前を颯爽と通っていく人が。その人は、二人に近付くとバジルから花楓を遠ざけた。
なんか見たことある……。
「お兄様?」
お兄様はバジルから更に遠ざけるように花楓の腕を引いてテラスの方に向かっていく。まさかこんな偶然があるなんて……。
私はとりあえずバジルに話しかけることにした。
バジルはナンパに失敗したというのに、愉快そうにお兄様と花楓を見ていた。
「ごきげんいかか?」
「ん?あ、お久しぶりですわが君」
バジルは私の手を自然な流れでとると、手の甲に口づけをした。動きは完ぺきなのに……。性格は女好きで軽くてダメダメね。
「失敗したみたいね」
「見てたんですかー?エッチ-」
「ふざけないでちょうだい」
私はバジルの足を思いっきり踏んだ。さすがのバジルもこんな大勢の人がいる場所で情けない声を出すわけにいかず、どうにか痛みを耐えたらしい。騎士なんだからこの程度の痛みなんてへでもないだろうに。
「にしても珍しいね。あいつが女の子を助けて、しかもそのまま連れて行くなんて」
「そうね……」
いつもなら助けて、じゃあ気を付けてってなるだけだろうに。前にもあったけど、そんな感じだった。どこかへ連れて行くなんてしてなかったもの。
「って、あんたの相手をしている暇なんてないのよ」
二人を追いかけないと。