アネモネの丘
花の丘
いつもと違って静かな朝の教室。クラスメートの半分どころか三分の一しかまだ来ていない。授業始まるまでまだ十五分あるにしても、少なすぎる。
舞踏会の次の日恒例の状況ではあるが、今年はさらに少ない気がする。
「おはよう、花楓」
いつもより静かに登校したルチアは機嫌良さそうに笑っている。野次馬が少なくて嬉しいからこんなに機嫌がいいのだろうか?
ちょっとだけ怖い。
「おはよ、ルチア」
昨日勝手に帰っちゃったから怒られると思ったのに。
「昨日はお疲れ様。慣れてないから疲れたでしょ?」
ルチアが気をつかってくれている。怒らずに……余計とこわい。もしかして、密かに怒ってるとか?
いつものルチアなら笑顔の裏に怒りを見せる事なんてない。でも、もしかしたら私が怒られてもあんまり反省してないから怒り方を変えてみたのかも……。
「ルチア……ごめん!昨日勝手に帰って……」
私が勢いよく頭を下げて謝ると、ルチアは笑った。
私が謝ったことに対して笑ったのか、頭をぶつけたから笑ったのかどっちだろう?
勢いよく頭下げすぎて頭が痛い。
「いいわよ。私も花楓といられる状況じゃなかったもの」
私が首を傾げると、私の額に手を当ててさすってくれた。赤くなってるのかな……。
「お兄様の仮面が外れて大騒ぎ。全く、お兄様もぼーっとしてたから」
王子様ってそんなキャラだったんだ……意外。私が話を聞きながらそんなことを考えていると、ルチアが私をジッと見つめてきた。
友人とはいえ、こんな綺麗な人に見つめられると恥ずかしいし悲しくなってくる。
「……花楓、あなたって本当に興味なかったのね」
「え?王子様?私は早く帰ったし、見なくても別に……」
「花楓、昨日先に帰った罰として今日、私の部屋に来て」
私は首を横に大きく振った。そんな、王女様の部屋に入るなんて!
いくら友達だからって……。
「絶対だからね!」
そう言ったルチアの顔が怖くて嫌だとは言えなかった……。
やっぱりちょっとは怒ってたんじゃないかと思う。