アネモネの丘
三分の一しか生徒が来なかったため、結局学校は休みになった。生徒が来ないのは分かり切っているのだから、毎年休みにしたらいいのに。
舞踏会の次の日に休むのは良いって先生が言ってるわけじゃないし、規則としてもあまりいいことではない。休んでいいのは体調不良かどうしても外せない家の用事か。
でも、舞踏会を主催しているのはレイティス王国。国の行事には積極的に参加するように言われてこの国の人は育てられている。学校のせいでその国の行事に参加できないとなると大きな問題。
学校は大変だと思う。難しい問題だ。
私は引きずられるようにして、渡り廊下から城に入りルチアの部屋に来た。
ルチアの部屋は思ったより可愛かった。ルチアだから、シンプルがいいとか言っていそうなのに。白を基調とした部屋はルチアらしいと思う。
ルチアに白はとても似合うし、ルチアも白が好きだから。
やっぱり城の一室で王女の部屋だけはある。無駄に広い。ただ、廊下のようにキラキラはしていなかったのは、ルチアらしい。
「花楓、ちょっと待ってて。絶対よ」
この部屋から一人で出たら、不審者としてつまみ出されそうだから出ないから大丈夫。王族のプライベートスペースに勝手に入るのは禁じられているし、やっぱり警護が厳しい。誰かと一緒じゃないと確実に疑われる。
私はエステルさんが煎れてくれたハーブティーを飲むと一息ついた。慣れない場所で緊張する。
それにしても、ルチアはどこに行ったのだろうか。
少しして戻って来たルチアは部屋に入るなりため息をついた。
「なんで今日に限っていないのかしら……それに、なんで私が」
そう呟いたルチアは、ハーブティーを一口飲んだ。ハーブティー飲んで落ち着いて、ルチア。
「ごめん、ちょっと用事入っちゃった……」
「そうなんだ……。お疲れ様、ルチア」
今日は授業無かったにしても、学校行って帰っても仕事があるって大変……ルチア大丈夫かな?
「また誘うから。エステル、門まで送って」
私は頷くとエステルさんについていった。
城を出た私は手伝いをしようと宿屋に戻ろうとしたが、ふと寄り道をしていこうと思った。
あの丘に行こう。こんな時じゃないと行けない。昼間なら魔物も居ないはず。
私は駆け足で丘に向かった。
この選択が私の人生を大きく変えるとも知らずに……。