アネモネの丘

 丘に登った私は感嘆の声を上げた。丘には沢山の色とりどりの花が咲いていた。一番見たいと思っていた紫の花は無かったが。この丘には冬以外は花が咲き乱れている。
 丘からは町も見えるし、景色がいい。今日はいい天気だから余計と景色が綺麗に見えた。

 しばらく花を見ていた私は背伸びをすると、宿屋に戻ることにした。長居はしてられない。いくら綺麗だからって町の外だ。
 後ろ髪惹かれながら丘を下りようとすると、近くの草むらがガサガサと揺れた。

 風では無く明らかに何か居る。

 私は焦った。今走れば逃げられる。と思ったが焦りに反して体が動かない。

「誰……?」

 人かはわからないが話しかけてみた。返事はない。その代わり、黒い毛皮を纏った小さな顔が草むらから覗いていた。

「猫?」

 私が拍子抜けして呟くと、猫は草むらから飛び出して近付いてきた。
 ヤバい、可愛い。

 しかし、近付いてきた猫を見たら明らかに普通の猫には無い物が。

「羽が生えてる……」

 ということは、これは魔物だ。でも、可愛い。
 小型の大人しい魔物を愛玩動物にする人もいるらしいから……大丈夫だよね。見たところ威嚇はしていない。むしろ、ゴロゴロと行って近付いてきている。
 私は近付いてきた猫を抱き上げた。

「可愛いね、名前なんて言うの?」

 抱き上げたた猫をよく見ると、首輪があった。飼い猫なんだ……ちょっと残念。
 首輪についているプレートを見ると、フィオレと書いてあった。

「君はフィオレちゃん?」

 私が話しかけると、フィオレちゃんはニャーと鳴いた。鳴き声は猫なんだ。喋ったらどうしようかと思った。

「どうしてこんなとこにいるの?迷子ちゃん?」

 聞いても答えはニャー。分からないけど思わず聞いてしまう。

 ああ、可愛い。癒される。





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