アネモネの丘
私がフィオレちゃんに話し掛けていると、フィオレちゃんが居た草むらの方からガサッという音が聞こえた。
フィオレちゃんを抱っこしたまま振り向くと、誰かが立っていた。
金髪碧眼の男の人。昨日の舞踏会で会った人に見えた。私も驚いたけど、金髪の人も驚いているらしく、そのまま見つめ合ってしまった。
格好は舞踏会の時よりラフだけど、間違いない、あの人だ。でも、私の事は分からない……と思う。あの時は化粧もしてたし……今は魔法はかかっていない。
数秒、数分どれくらい見つめ合ってたかは分からないけど、フィオレちゃんが私の腕から飛び降りて金髪の人の足元まで行った時に、ふと我に返った。
「あ、あの……その子の飼い主さんですか?」
ずっと話さないのも気まずいから私から話しかけてみた。
金髪の人はフィオレちゃんを抱っこすると、さっきのフリーズしていた時の顔とは一転して、爽やかに笑った。
「ああ。フィオレって言うんだ……って知っていたな。名前呼んでいたしな。こういうの好きなのか?」
「はい。ペットいいですね……家にも欲しいんですけど、なかなか飼えなくて」
ディルクさんと看板ペットが欲しいって話してたけど、なかなか飼えなかった。何を飼うか迷いすぎて。
「そうなのか?でも何で?」
「何を飼うか悩んでしまって。それに、お店してるので……」
「そうか……。フィオレが子どもを生んだらいるか?こいつなら手はあまりかからないぞ」
金髪の人はそう言って、フィオレちゃんを肩に乗せた。フィオレちゃんは魔物の中でも賢くてとても穏やかな魔物らしい。人の言葉も認識している。
「フィオレちゃん赤ちゃんいるんですか?」
「あとひと月も経たずに生まれるはずだ」
なんとこんな可愛いフィオレちゃんが妊婦さんだったらしい。
「へー……元気な赤ちゃん生んでね」
ニャーと鳴いて私の方に飛んでくる。一応、羽も飛ぶために機能しているみたい。