アネモネの丘
 ソファーに座ったバジル様は私の方をじっと見てくる。だから、私は前を向けない。

「そう言えば、フェルナンドとちょこちょこ会ってるらしいね」

 ちょこちょこって……まだ三回しか会ったことない。今日を合わせたら舞踏会と丘と今日。それはちょこちょこ会っているというのだろうか?

「フェルナンドの事どう思う?」

 私はバジルに唐突に聞かれ、返答に困った。どう思うって言われても……いい人だと思う。心が広くて優しい人。動物が好きで。でも、私とは遠い世界の人。

「私何かが会うには恐れ多い人……です」

 私が言うと、バジル様は笑った。

「そっか、なんかあいつが可哀そうだ」
「え?何ですか?」

 何が誰が可哀そうなんだろう?私が聞いてもバジル様は答えてはくれなかった。私に聞こえるようにつぶやいたのだから教えてほしい。

「恋人はいないの?」
「いません」

 また質問攻めの開始。疲れるんだよね……宿屋で働くより疲れる。食堂で働いてるとよくお客さんに話を聞かれるけど、こんなに沢山じゃないし、だいたいおじさんだからまだ気が楽。

「君って結構クールだよね」

 私の人見知りは他人から見たらそう見えるのだろうか?初めていわれたけど……。私の第一印象は大体が大人しそう。実際親しくなれば全然大人しくないんだけど……。
 あと、宿屋で手伝いをしている時も。人見知りしてたら手伝えない。

 私はバジル様の質問に答えられるところはテキトーに答えて笑ていると、一時間ほど経った所でバジル様が立ち上がった。

「まあいいや。そろそろ解放してあげるよ」


 バジル様のその言葉に私は少し安堵した。やっとで家に帰れる……今日は色んなことがあり過ぎて疲れた。

 

 私はバジル様に案内されて城門までやってきた。そして別れ際にカードをもらった。騎士隊の寄宿舎に入るために必要なカードらしい。無くさないようにしないと……。




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