アネモネの丘
王立レーティス校は城の隣にあった。
大きい城門をくぐって右の道を行くと校門があって、噴水のある中庭を抜けると校舎がある。校舎の二階には城に続く渡り廊下もあるから届を出せば城の書物庫の本を見ることもできて便利。学校にもあるけど、城の書庫は比べ物にならないくらい沢山本がある。
城内も一般に開放されているから王族の寝室とかプライベート空間以外はパスを持っていれば自由に出入りできる。庭とか本当に綺麗で大好き。
城の中に入る用事なんてなかなかないけどね。
時々すれ違うクラスメートとか知り合いに挨拶し、時々後輩らしき人から挨拶されるから返しながら教室に入ると、窓際の自分の席に座る。
この窓から家の部屋からも見えている丘が見れるから大好き。実際に行ったことは一回しかないけど、春になると紫の花が一面に咲くらしい。遠くから見ても綺麗だけど、近くで見たらどれだけ綺麗なんだろう?
この世界にきてすぐに行っただけだからほとんど覚えていない。その時、誰かとあった気がするけど思い出せないし……。何か大切なことを忘れている気がするけど、どうしても思い出せない。
いつか思い出せるのかな?
私が窓の外をぼーっとしながら見ていると、教室の外が騒がしくなった。これもいつものことだからあえて見ない。
朝の恒例行事、王女の登校。
「ごきげんよう、花楓」
私は声の主の方を見ると、桃色でウェーブのかかった綺麗な髪と顔のクラスメートがスカートをつまんで頭を下げてきた。私も立ち上がるとその真似をする。ちなみに、この学校は一応制服がある。
「ごきげんよう、ルチア」
「……私自身がするのはいいけどされるとちょっと胸糞悪いわね」
ルチアは少し眉間にしわをよせるとそう呟いた。麗しい顔が台無しすぎる。私が座るとルチアも私の席の前に座った。
本当に学校では王女らしくない。