アネモネの丘
レイティスの王女であるルチアと仲が良くなったのは入学の時。席が隣でルチアを王女と知らなくて普通に話しかけてしまってから。
ルチアは貴族のお嬢様が大層嫌いらしい。媚びた感じと我ままで異性に色目使ってるのがバレバレなところが嫌いと言っていた。そんな人ばかりではないけど、嫌なんだって。
だからルチアは庶民にも平等に接してくれる。ルチアの兄で次期王のフェルナンド様もルチアみたいにフレンドリーだって誰かが言ってた。
でも、こんな綺麗で可愛くて人形みたいなこと友達なんて……私って凄い得
してる。癒されるもん。
王族でこんなに可愛いから登校する時に学校のみんなが見に来る。一年の時は休み時間の度に来てたけど、ルチアが登校の時以外はやめてって言ってからこんな感じになった。
「ねえ、あなたが興味無いの承知で言うけど……舞踏会行かないの?」
「行く予定はないよ」
今年初めてルチアから言われた。今までは気をつかって言わずにいたんだろうな。
「私踊れないし」
「授業で習ってるでしょ。それに、あなた先生に褒められてたわ」
「仮面とかないし」
「貸してあげるわよ」
「や、ルチアのは高級すぎるからいい!」
「大丈夫よ。私からのただのプレゼントだもの。行きましょうね?」
ルチアは仮面が入った袋を無理やり私の鞄に入れた。強引すぎる!
去年、断るときに来年は行くって言ったのはまずかったなあ。仮面をつけた人の集まりって正直怖い。出会いの場って言っても、仮面付けてるから素顔見れないよね……。目元って人の判断をするうえで大切な場所な気がする。まあ、知った人なら仮面付けても判断できるけど。
「今年で卒業よ?もしかしたら私が参加できるのも今年が最後かもしれないし……」
ルチアは悲しそうに呟いた。ルチアはヒアス公国のアーチスト公に嫁ぐ予定になってたんだっけ。……相手が生まれながらにして決まっているのも残酷。好きな人ができても一緒になれないんだし……。
今まで好きな人ができたこともあったらしいけど、ルチアは思いを絶対告げなかったらしい。……ルチアの事だから好きになったのは庶民だろうし、王族に釣り合うような人って言ったらそんなに居ないよね。