アネモネの丘

城での一時 *ルチア視点*

 学校での授業が終わり、帰り支度で慌ただしい教室をでた私と花楓は二階の城との渡り廊下の前に来た。

「また明日ね、ルチア」
「じゃあね、花楓」

 私は花楓に手を振るといつものように学校の二階にある渡り廊下から城に戻った。
 花楓に遊びに来るように伝えたんだけど、宿屋を手伝わなきゃいけないからって帰って行った。本当、まじめで親孝行なんだから。

 花楓の両親はちょっとしか見たことないけどいい人そうだった。本当の親子じゃないのが信じられないくらい、仲のいい親子。
 私のところとは大違い。本当の親子だけど、私たちの仲はあまりよくない。お父様にとって私はただの道具なんだもの。

 花楓は異世界から来たって聞いたけど、別にそんなのどうでもいい。花楓は花楓。それに、異世界から流れてくる人が時々いるからそんなに気にすることでもない。
 ただ、急に居なくなるのだけは悲しいからやめてほしい。
 異世界の人が帰ったって話は聞いたことない。だから大丈夫だと思う。花楓にはちょっとかわいそうだけど。

 私が城の中を進んで、自室に入ると次女のエステルが部屋に入ってきた。

 エステルは私が幼いころから一緒に育ってきた侍女。エステルは小さい頃から城で献身的に働いてくれている。
 一番信頼できる私付きの侍女。 

「おかえりなさいませ、ルチア様」
「ただいま、エステル。……ねえ、お兄様ってどこにいるか知ってる?」

 お兄様が本当に舞踏会に来るかどうか聞き出さなきゃ。花楓を紹介したいし。仮面付けた状態で紹介してもおかしいかな……。でも、花楓って城にあんまり来てくれないし。

「フェルナンド様なら自室に」
「わかったわ。下がって頂戴」

 エステルは私に一礼すると部屋から出て行った。私専属の侍女だからってずっと一緒にいるわけじゃないから楽。さすがにお父様は王だから絶対護衛がつくけど、王族だからって皆が皆護衛が付くわけじゃない。


 私は制服から着替えるとお兄様の部屋へ向かった。



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