君が想い出になる前に




ーー「あ、まずい。
ごめん、わたしのピッチだ。」





お母さんからのメール。





「麻央、ピッチ持ってんの?」




「あ、うん。うち親共働きだから
持たされてる。」




お母さんへのメールの返信を打ちながら
答えていると

目の前に黒くてごつごつした手が
すっと伸びてきた。




「ーーえ?なに?」



「貸して。」

そう言ってわたしからPHSを取り上げ
何か打ち始めた。





「俺も持ってるから番号入れとくね。
うちのクラスのやつ、まだ俺しか持ってなかったから
嬉しいよ」



惣右介が笑いながら言った。




(嬉しいって、なにが?)


惣右介がぽーんとPHSを投げ返してきた。




「いつでも電話してね、まーお♡」




「ちょっと、危ないーー」




走り去って行く惣右介に叫びながらも
わたしはなんだから顔が熱くなっていた。



< 13 / 27 >

この作品をシェア

pagetop