君が想い出になる前に
教室のドアの前に立って
わたしは一度だけ大きく深呼吸をした。
ガラガラーー
「あ、龍くん!
何してるの??」
わたしはいつもと変わらない態度で
龍くんに話しかけた。
「あぁ、ちょっと。
なんか忘れ物?」
「うん、宿題のノート忘れちゃって(笑)
ねぇ龍くん、今日昼には学校来てたでしょ?
なんで教室来なかったの?」
「あぁ、気づいてたんだ。
いや俺勉強追いついてないし
わかんねーから学校来ても職員室で個人指導(笑)
それに俺が教室入ると、雰囲気壊すだろ?」
そういうと龍くんは
今度は少し寂しそうに笑ったーー
わたしはたまらなくなって
思わず叫んでいた。
「そんなことないよ!
わたしは龍くんが教室に来たら
すごく、嬉しい!!」
龍くんがビックリした顔をして
しばらくして
いつものように優しく笑ったーー
「ありがとなーー」
そしてわたしは気づいた。
あぁ、そうか。
わたしは
あの時見たこの笑顔に
恋に落ちてたんだーー
龍くんが他の人を見ていても
わたしは、龍くんのことが好きなんだーー
と。