威鶴のmemory
確かに、怒らない母親にも問題はある。
でも、やっぱりその原因は、トーマでしょう……?
「トーマが優しくなれば、縮こまることもないと思う」
「俺のせい?」
「そうじゃなくて。トーマは、まだ子供の頃の思いを引きずったままでしょう?」
私の言葉に、トーマは固まった。
きっと、図星。
「俺はガキじゃねぇ」
「そういう意味じゃない。だってトーマはいつも私と一緒にいるとき、こんなに子供じゃないでしょう?」
「それは、依鶴と大人の付き合いをしてるからで……」
「関係ない。違うの、門をくぐった瞬間から、まるで別人みたいだった。高校時代頃のトーマに戻ったみたいだった」
過去のトーマは、全てを冷め切った瞳で、見下していた。
でも今は、変わったはず。
威鶴の時の記憶の中で、笑ったり怒ったり悔やんだり頑張ったり、いろいろな表情を見せてくれていたじゃない。