威鶴のmemory
「……お、おぅ……なにをだ」
トーマの笑顔が若干引きつっているような気もしなくもないけれど。
私はカバンの中を漁って今朝入れたものを取り出した。
「気持ち!気持ちだけていいからうけとってほしい。仏壇のお供え物でも何でもしていいから、気持ちだけ……!」
「依鶴が……俺に?」
「……そ、そう。トーマのよりうまく作れてる自信はないけど」
そして、優雨さんがキレイに包装してくれたチョコレートを差し出した。
トーマの反応が、怖い。
「ぶふっ」
「!?」
クックッと笑うトーマの予想外の反応に、私の顔はポカーン。
なぜいきなり、笑い出した?
「なんで仏壇にやらなきゃなんねーんだよ」
「え、あ、いやそれは例えというかなんというか」
「誰にも、一口たりともやらねーよ。さんきゅ」
きゅんと締め付けられた、甘い胸の痛み。