威鶴のmemory
「変わった所を、見せたくないの?恥ずかしいの?」
「なに、言って……」
「私は、恥ずかしかったから。ちづちゃんと再会した時、なぜか子供の頃に近い気持ちで接していた。『大人』とか『変化』を見せるのが、恥ずかしかった」
人格が3つもあった事、本当は知られたくなかった。
一人前以前の問題で、恥ずかしかった。
変化は怖い。
だからあえてその変化前を演じる事もある。
トーマの場合は、家を出たのが思春期の、親を嫌う年頃の時だったから、今と大きく変わっている。
「本当はもう……そんなに嫌いじゃないんでしょう?」
「……」
「だから帰って来るって、決めたんでしょう?」
トーマが、私の顔に向く。
そしてゆっくりと、母親に視線を向ける。
私は、トーマの手を握った。