威鶴のmemory
「大丈夫。いつも通り、私と一緒にいる時みたいな雰囲気を思い出して。嫌いを1回消して、もう一度考えてみて」
もう、親を本気で嫌う年は過ぎただろう。
不必要な感情を消さなければ、いつまでも引きずってしまう。
トーマの場合は特に……プライド高いから。
「……はぁ」
ため息を吐いて、手を握り返してきたトーマ。
「なんでお前にはバしるんだ」
「3年もパートナー組んでたからね」
ふっと笑って、お母さんに声をかけた。
「びびってんじゃねーよ」
その声は、いつも通りのやさしさを含んでいて、少し照れているようだった。
「……透眞……?」
ようやく顔を上げたお母さん。