威鶴のmemory
「……お父さんが話しかけて来ないのって、ただ不器用だっただけ?」
「いつも不機嫌だったじゃねーか」
「あーいう顔なの。トーマだって怖がられる顔でしょう?」
そう言われたトーマを見て、私は思い出してしまった。
『お兄ちゃん、おかおがゴクアクだね』
占いの時、迷子が私の所に来た時の一言。
あの時ちょうど来たトーマに、怖いもの知らずなその子はそう言っていた。
そう、トーマは無表情ですら怖い顔なんだ。
「それに、あなたたちが子供の頃は、顔見られる度に毎日のように泣かれていたから、近付けなくなっちゃっただけ」
……それは確かに、どうしていいかわからなくなる。
お父さんも苦労していたんだな……。
「哀れ……」
「ダメよトーマ、可哀想でしょ?でも確かに、私と叶香は家で泣いてた記憶はあるのよね。トーマは……」
「敵だと見なして逃げてたな」
「……やっぱり哀れかもしれない」